虫歯が進行すると、下記の図「C3」「C4」のように歯の神経(歯髄)まで達します。
ここまで虫歯が進行してしまった場合の治療法としては、虫歯菌が感染した神経を取り除き、根管(神経が入っている管)を綺麗に清掃してからかぶせ物を装着していきます。
言葉だけをみると、一見簡単な処置のように思えますが、「根管を綺麗に清掃する作業」は非常に困難を極めます。
なぜなら、左図のように、根管は非常に複雑に入り組んでおり、完璧に清掃を行わなければ、「痛み」「腫れ」などの原因となり、「根尖病巣」という病気にもなるためです。
この画像内の黒い部分が、神経の入っている管であり、このすべてを綺麗に清掃する必要があります。
しかしながら、ほとんどの歯科医院が行っている従来の根管治療では、綺麗に清掃することは困難です。これは、保険制度の関係で、根管治療に時間をかけることが難しく、また、最先端の設備が高価であるためです。
当院では、根管治療を成功させ、他院で残せないと言われた歯でも、可能性がある限り残すために、他院とは異なる様々な特徴がありますので、それについては次節からご紹介したいと思います。
※「精密根管治療」は自費治療になり、保険適応されませんのでご了承ください。
「マイクロスコープ」とは、治療部位を拡大して見ることのできる大型顕微鏡のことです。
どれ程度、歯の神経がある根っこの中を見ることができるかが治療の成否を分ける根管治療において、成功率を上げるためには絶対に欠かすことのできない機材といえます。
上の画像が「肉眼」で見た状態と、「マイクロスコープ」で見た状態の比較になります。
どちらの方が精度の高い治療ができるかは一目瞭然ですね。
当院ではマイクロスコープを導入したことにより、「抜歯」という最悪のシナリオを回避する確率が飛躍的に高まりました。根管治療においては「見える」「見えない」というのは、治療を成功させるためには非常に大きな違いとなります。
※マイクロスコープを使用する場合は自費診療となりますのでご注意下さい。保険適応内で根管治療を行う場合は、拡大ルーペを用いて精密根管治療を行います。
30代男性。他院にて左下6番の根管治療をしてきたものの、一向に治る気配が見えず、歯茎の腫れ・痛みの症状が出たことをきっかけに当院へ来院されました。
CTを撮影したところ、左下6番の不十分な根管充填により根尖病変が広範囲に拡大し骨が溶かされていました。下記のCT画像の右側は、左側と同様の写真で根尖病変の範囲を赤色で囲ったものです。非常に大きな根尖病変であることが分かるかと思います。
マイクロスコープを用いた精密根管治療にて治療をさせていただき、治療終了から約半年が経過した時点でのCT画像は次の通りです。骨が溶けていれば黒く映るのですが、黒い箇所は少なく、骨が再生されてきています。現在特に症状もなく、問題なく噛めています。
20代女性。3、4年前に治療した右上6番の歯茎が腫れていることに気づき治療してもらったかかりつけ医へ受診したところ根管が塞がっているので治療できないと言われ、抜歯を薦められたものの、歯をどうしても残したいという思いから当院へ来院されました。
歯茎を見てみると、青丸で囲まれている部分にサイナストラクト(膿が出る通路)が確認でき、数年前に処置した根管内が細菌感染し再治療を要するものでした。
レントゲン写真を撮影してみると右上6番の根の先端に病変が確認され、3本ある根のうち1つの根しか治療されておらず、それも根の途中までしか治療されていないことがわかります。不完全な根管治療が原因で細菌感染を起こし、腫脹につながったと診断できます。
こちらの患者様も精密根管治療で処置したのですが、根管充填後のレントゲン写真はこちらです。
右上6番の右側にある近心の根管は、かなり湾曲しておりますが、しっかり根の先まで薬が充填されていることが分かります。
下記の写真は他の患者様ですが、左の写真は肉眼で歯を見た場合のもので、右側は肉眼の20倍に拡大して根管内を確認したものです。
これらの写真で分かるように、マイクロスコープを用いることで、肉眼では見えづらかった箇所が目視にて直接感染物を除去できるようになり、再感染を防ぐ薬を充填しやすくなります。また、閉塞してしまい、肉眼では確認できない根管を見つけることも容易になります。下記の写真に示すように肉眼では発見が難しく、感染源の原因のひとつとなる副根管も確認することができるようになります。
↑治療開始時1つの根管しか確認できず汚れも多い ↑1根に2つ目の根管と周囲の汚れも除去されたことが確認できる
今回の症例のように非常に湾曲した根管では柔軟性の高いNitiファイル(ニッケルチタンファイル)を用いたことで治療効果を高めました。
しっかり原因を取り除くことができ、現在では治癒し「抜歯」という選択肢を避ける事が出来ました。
前述したように、人によって歯の根っこの構造は異なります。
根っこの構造を把握するために多くの歯科医院がレントゲン撮影を試みるのですが、レントゲンでは平面としてしか捉えることができないため、正確な根の構造を知ることは極めて困難だと言えます。
当院が導入している歯科用CTでは、歯の内部を立体的に撮影可能であり、根の構造を正確に把握することができるため、根管治療の成功に大きく貢献しています。
また、根管治療において「根尖病巣」とよばれる病気があり、治療せずに放置していると、ある時急に痛みが出たり、骨が溶かされていきます。 この根尖病巣の有無は、レントゲンでも判断可能(ぼんやり黒く映ります)ですが、歯科用CT(3次元立体画像)を利用することで、レントゲンでは見えない部分も可視化することができ、より一層精密な診査・診断、そして治療が可能になります。
※根尖病巣:下記画像の赤丸が付いている部分です。
ラバーダム防湿とは、治療する歯以外を薄いゴム製シートで覆いかぶせて口腔内の唾液や細菌による治療部位への感染を防止する道具です。
ラバーダムを使用することで、様々な口腔内細菌が根管に侵入するのを防ぎ、無菌的な処置を行うことが可能になります。逆を言えば、ラバーダム防湿を行わないで行う根管治療は細菌感染の可能性が高まり、再治療の原因ともなります。
根管治療でラバーダム防湿を行うことは欧米では必須の処置となりますが、日本で実施している医院は全国でも数%しかないと言われています。
根管治療では、虫歯に侵された神経を除去するために「ファイル」と呼ばれる器具を使用します。
このファイルは大きく分けて二種類あり、ひとつが「ステンレスファイル」、もうひとつが「ニッケルチタンファイル(NiTiファイル)」というものです。
多くの歯科医院ではステンレスファイルのみを使用していますが、当院では十分な柔軟性を持ち、より神経を除去できるニッケルチタンファイルも同時に導入しています。
これにより、患者様の歯を残すための精密根管治療が可能となるのです。
※根管治療にニッケルチタンファイルを用いる場合は自費診療となりますのでご注意下さい。
根管治療では、上記でご紹介したファイルと呼ばれる、ステンレス製のヤスリのような器具で、根管内の汚れを削っていきます。
ヤスリでものを削ると細かな削りカスが出るのと同様に、根管治療でもファイルで歯質を削る際にカスが出ます。このカスにはたくさんの菌が存在していますので除去しなければならないのですが、手用の器具では除去できませんので、ほとんどの歯科医院では除去せずに、空けた穴に蓋をして根管治療を終えてしまいます。
1度治療して完治したと思っていた箇所が、再度治療を行わなくてはならないのはこのためです。
この問題を解決するのが「EDTA」、「次亜塩素酸ナトリウム」という薬剤です。
専門的な話になりますので詳細は割愛させていただきますが、簡単にご説明をしますと、これらの薬剤は、ファイルで生じた削りカスを溶かし、消毒することで根管内をクリーンな状態にし、病気の再発を防ぐものです。
当院では、これらの薬剤を用いて根管治療を行っております。
根管治療の最後の仕上げとして「根管充填」というものがあり、これは、歯の神経を取ったことにより空洞になった根管内を、緊密に塞ぐことを指します。この隙間を完全に塞ぐことができなければ、これが原因となり数年が経過した時に再び感染してしまうことがあります。
保険適用内の治療では「ガッタパーチャ」と呼ばれる、ゴムのようなもので隙間を塞ぐのですが、冒頭で画像をお見せしたように、根管内は複雑な構造になっていますので、隙間を残してしまうことがあるため、再治療を行うケースが多いのです。
それに対して、「MTAセメント」と呼ばれるものは前述した隙間を塞ぐことができ、かつ、殺菌作用および強い接着性、歯の組織を再生させる効果があるため、治療後の経過が非常に良好になります。
当院では、根管の高い封鎖性、適合性、歯と一体になる再石灰化性を持つMTAセメントを使用しています。
精密根管治療 | 保険適用の根管治療 | |
---|---|---|
適用 | 最善の治療を選択できる | 保険診療のルール |
概要 | ・マイクロスコープ、ニッケルチタンファイルの使用 ・厳重な無菌的処置 ・手順や材料にこだわり、最新の治療法で歯にとって最善をつくすことができる ・時間をかけて丁寧に治療ができる(保険診療の2倍程度) |
・従来通りの治療 ・現在の治療レベルに比べて最低限レベルの治療 |
検査・診断 | 3次元CTスキャンにより確実な診断ができる | 2次元レントゲン |
治療時間 | 1回60~90分 | 1回30分 |
通院回数 | 少ない(1~3回) | 多い(4~5回) |
精密治療 | 高性能マイクロスコープを使用 | 拡大ルーペ |
無菌的治療 | 使用する器具を徹底的に滅菌し、可能な限り使い捨ての器具を使用 | 必要最低限の対応 |
使用薬剤 | 効果が認められているが保険の認可が下りていない薬剤を、患者様の同意のもと、歯科医師の裁量で使用することができる | 保険で認められたものに限る |
根管内消毒 | 十分な濃度の消毒薬による科学的清掃ができる | 必要最低限 |
2年後の歯の保持率 | 90%以上 | 50%以下 |
費用(税込) | 【根管治療(抜髄)の場合】 前歯:77,000円〜/1歯 小臼歯:88,000円〜/1歯 大臼歯:99,000円〜/1歯 【感染根管処置の場合】 前歯:88,000円〜/1歯 小臼歯:99,000円〜/1歯 大臼歯:132,000円〜/1歯 |
保険適用(数千円/1歯) |
保証 | 2年間(半年に1度の定期健診が必要) | なし |
当院では、患者様の抱えていらっしゃるお口の悩みや疑問、不安などにお応えできるように努めております。
ご相談や些細なことでも構いませんので、私達にお話しして頂けたらと思います。
ご興味がある方は下記からお問い合わせください。